ブルガリアンスクワットで尻を意識すると大殿筋に効かない理由

西永福駅、永福町駅から徒歩数分の位置にあるパーソナルトレーニング専門ジム、大和パーソナルジムを運営しております代表の大和と申します。
下半身やお尻の筋肉を効果的に鍛える代表的なトレーニングとして、ブルガリアンスクワットは広く取り入れられています。
このエクササイズを行う際、指導現場や一般的な認識として「動作中にお尻の筋肉を強く意識する」「ターゲットとなる部位の収縮を感じ取る」というアプローチが推奨されることが多々あります。
しかし、近年の運動制御および運動学習に関する学術的な研究データに基づくと、このように特定の筋肉や身体の部位に直接意識を向けることは、その筋肉が正しく、かつ効率的に機能することには繋がらないことが実証されています。
お尻の筋肉を意識しているつもりでも、身体の内部では動作を妨げる無駄な緊張が生まれ、結果として本来発揮されるべき筋肉の機能や運動出力が損なわれてしまうのです。
本記事では、運動時の意識の向け方が身体のパフォーマンスや筋活動に与える影響を検証した2つの包括的な文献を根拠として、ブルガリアンスクワットで「お尻を意識する」よりも、例えば「階段を登るように行う」という外部への意識を持った方が、なぜ正しくお尻の筋肉に効くのかを解説します。
動画でも解説しています。
目次
1.根拠となる2つの文献
2.文献の要約:外部フォーカスがもたらす「有効性」と「効率性」
3.文献の知見に基づくブルガリアンスクワットの解説
4.終わりに
1.根拠となる2つの文献

本記事で解説する内容のすべての根拠となるのは、運動制御・運動学習分野の第一人者であるガブリエル・ウルフ(Gabriele Wulf)教授によって発表された2つの包括的なレビュー論文です。
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文献1: 『Attentional focus and motor learning: a review of 10 years of research』(2007年発表) 1998年の初期研究から約10年間にわたって実施された、注意の焦点に関する様々な実験データを収集・分析した論文です。
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文献2: 『Attentional focus and motor learning: a review of 15 years』(2013年発表) 前述の論文以降の研究成果をさらに追加し、15年間に及ぶ膨大な学術的証拠をまとめたレビュー論文です。
これらの文献では、運動中の意識の向け方を、自身の身体の部位や動きそのものに注意を向ける「内部フォーカス(Internal Focus)」と、運動によって生じる効果や道具、環境、あるいは外部のイメージに注意を向ける「外部フォーカス(External Focus)」の2つに明確に分類し、どちらが人間の運動パフォーマンスや学習において優れているかを多角的な実験データから検証しています。
2.文献の要約:外部フォーカスがもたらす「有効性」と「効率性」

ウルフ教授のレビュー論文に記載されている実験結果は、一貫して「外部フォーカス」が「内部フォーカス」よりも運動の有効性と効率性の双方を大幅に高めることを示しています。
それぞれの内容がどちらの文献で言及されているのかを含め、実験事実に即して簡潔に要約します。
運動の有効性(正確性・バランス・習得度)について
この内容は、2007年発表の『Attentional focus and motor learning: a review of 10 years of research』および2013年発表の『Attentional focus and motor learning: a review of 15 years』の両方の文献において、数多くの実験データとともに検証・報告されています。
バランス能力を測定する様々な課題(可動式のプラットフォームやディスクの上での姿勢維持など)や、各種スポーツスキル(ゴルフのショット、バスケットボールのフリースロー、ダーツの投擲など)を用いた多数の実験において、外部フォーカスの優位性が実証されています。
自身の足や腕の動きを意識する(内部フォーカス)よりも、道具の動きや外部の標的に意識を向ける(外部フォーカス)方が、動作の正確性、一貫性、およびバランス維持能力が有意に向上します。
さらに、指示やリマインダーを一切与えない状態で行う翌日以降の保持テストにおいてより明確な差となって現れることから、外部フォーカスは運動スキルを長期的に定着させる「運動学習」において極めて高い効果を持つことが分かっています。
この効果は、初心者の学習スピードを速めるだけでなく、エリートアスリートのパフォーマンス向上、さらには子供、高齢者、運動障害を抱えるリハビリ患者に至るまで、あらゆる対象者において一貫して確認されています。
運動の効率性(筋活動の最適化・最大出力)について
この内容は、2007年発表の『Attentional focus and motor learning: a review of 10 years of research』でその基礎的な知見が示され、2013年発表の『Attentional focus and motor learning: a review of 15 years』において筋電図(EMG)や最大筋力出力、心肺機能といった生理学的データが大幅に追加され、包括的に網羅・体系化されました。
筋電図を用いた複数の研究や、最大筋力の出力測定、垂直跳び、ランニング中の酸素摂取量測定など、生理学的アプローチを含む多岐にわたる実験データがまとめられています。
自身の筋肉や関節の動きに意識を向ける(内部フォーカス)と、動作を行う主働筋が働くのと同時に、その動きにブレーキをかける役割を持つ拮抗筋までもが同時に緊張してしまう「共収縮」が発生しやすいことが判明しました。
これにより、筋肉同士が引っ張り合う形になり、無駄なエネルギーが消費され、動作の滑らかさが阻害されます。
一方で、外部の効果やイメージに意識を向ける(外部フォーカス)と、全体の筋活動量が低く抑えられることが確認されました。
これは、脳や運動システムが「その動作を遂行するために本当に必要な最低限の筋肉だけ」を自動的に選択し、無駄なく動員していることを意味します。
その結果、無駄なエネルギー消費が抑えられ、筋肉の余計な緊張が排除されるため、実際に出力される最大筋力やジャンプの高さ、運動の持続力が有意に向上するという現象が起こります。
3.文献の知見に基づくブルガリアンスクワットの解説

これらの包括的文献に記録されている科学的事実を、ブルガリアンスクワットというトレーニング種目に適用すると、「お尻の筋肉を意識する」ことと「階段を登るように行う」ことの決定的な違いが論理的に説明されます。
ブルガリアンスクワットを行う際に「お尻の筋肉」という自身の身体の一部や特定の筋肉に意識を集中させることは、文献に定義されている「内部フォーカス」そのものです。
この状態では、脳が意識的にお尻の筋肉をコントロールしようとするため、運動システム本来の自動的な制御プロセスが妨げられます。
その結果、2013年の文献にまとめられている筋電図実験等で示されているように、お尻の動きをサポートする周囲の筋肉や、その動きのブレーキとなる拮抗筋に無駄な共収縮が発生します。
つまり、本人が「お尻に効かせよう」と強く意識すればするほど、身体の内部では筋肉の無駄なエネルギー消費が増え、動作の効率が低下し、お尻の筋肉が本来果たすべき正しい機能パターンで動かなくなってしまうのです。
これに対して、「階段を登るように行う」というアプローチは、自身の身体の内部ではなく、日常の動作イメージや外部の環境への働きかけに意識を向ける「外部フォーカス」に該当します。
この意識でブルガリアンスクワットを遂行すると、2つの文献が示す通り、脳や運動システムは意識的な介入を受けることなく、その動作を達成するために必要な筋肉の動員パターンを自動的に組み立てます。
無駄な共収縮やブレーキとなる緊張が抑制され、エネルギー効率が最適化された状態で動作が実行されるため、お尻の筋肉を含む下半身の主働筋群が、人間本来の正しい機能に沿って動員されます。
無駄な緊張に邪魔されることなく、動作に必要な負荷が的確にお尻の筋肉へと伝わるため、結果として「正しくお尻の筋肉に効く」という現象が起きるのです。
写真のように足の裏にタオルを敷き、「タオルを足裏で踏むように行う」のもおすすめです。
4.終わりに
以上の学術的根拠から明らかである通り、ブルガリアンスクワットにおいてお尻の筋肉を正しく機能させ、トレーニングの効果を最大化するためには、自身の特定の筋肉や身体の動きに意識を縛り付けるアプローチは避けるべきです。
ガブリエル・ウルフ教授による2つの包括的レビュー文献が一貫して示しているように、運動出力を高め、筋活動の効率性を最適化し、正しい運動パターンを引き出すためには、身体の内部ではなく外部のイメージである「階段を登るように行う」という意識を持って動作を遂行することが推奨されます。
当ジムでは、実際のパーソナルトレーニングの現場において、ブルガリアンスクワットのように、股関節、膝、足首といった多関節を同時に動かす必要がある動作時に、「お尻を意識して」などといった指導は、開業当初から一貫して行っておりません。
参考文献
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Wulf, G. (2007). Attentional focus and motor learning: a review of 10 years of research.
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Wulf, G. (2013). Attentional focus and motor learning: a review of 15 years.
当ジムではあなたの体を的確に評価し、あなたに合った運動を行っていくので確実に効果が感じられます。
だからこそ運動を継続する事が出来、正しく効果が出ているので確実に体が変わっていきます。
どうぞお気軽に無料カウンセリング・体験トレーニングへお越しください。


この記事を書いた人
大和弘明(大和パーソナルジム代表)
・全米スポーツ医学協会認定パフォーマンス向上スペシャリスト(NASM-PES)
・タイ政府公認タイ伝統医療協会認定セラピスト
・日本タイ古式マッサージ協会プロフェッショナルセラピスト
・2016年 第68回東京都パワーリフティング〔ノーギア〕選手権大会66kg級 優勝
【大和パーソナルジム情報】
東京都杉並区大宮2-7-4-102
京王井の頭線 西永福駅から徒歩5分

